更新日: 2023/1/24

A1A株式会社は、創業時から開発・提供してきた「RFQクラウド」を2020年に事業ピボットしました。A1Aはそれまで売上を順調に伸ばしておりました。そんな中、プロダクト開発にストップをかけたのはCTOの佐々木さん。

なぜ、RFQクラウドはピボットすべきだと考えたのか――。その背景には、佐々木さんが考えるSaaS企業の「命」とも言える重要な要素が関係しています。A1Aがどのような意思決定を行ってきたのか、事業ピボットから現在までの経緯について、佐々木さんにじっくりお伺いしました。

ユーザーや社内メンバーから噴出していたA1Aへの不満

―RFQクラウドは、当初どのようなサービスだったのでしょうか?

佐々木:今思えばRFQクラウドは、デジタル化ソリューションSaaSとして開発されたのだと思います。製造業をターゲットにしていましたが、業界は問わず「メールやExcelで取引先から見積もりを取る」という業務の自動化や可視化、属人化の解消を図るのがコンセプトでした。今までバラバラになっていた業務を一元化することで社内外の取引をより便利にすることができる業務システムを作っていたし、お客様もそれを期待していたんだと思います。

―RFQクラウドはどのような問題を抱えていたのでしょうか?

佐々木:RFQクラウドは売上を順調に伸長していましたが、一方でお客様からのクレームや改善要望が非常に多くなっていました。これに対して、当時は場当たり的な対応を繰り返していたため、社内のプロダクト開発のメンバーやCSのメンバーからの組織への不安・不満も蓄積されていってしまいました。さらに顧客インタビューを実施したところ、正直なぜ購入いただけているのかと思ってしまうほどお客様のニーズに応えられていない現実を目の当たりにしました。情けない話ではありますが、何が本当に解決すべき課題なのか、強いニーズはどこにあるのか、プロダクトをどの方向に進めればお客様が満足してくれるのか、先行きが全く見えない状態に陥ってしまいました。

社員からの率直な意見を受け止め、反省点の振り返りからスタート

ー苦しい状況の中、社内組織はどのような状態でしたか?

佐々木:表層的な結果としてお客様からの不満などがありましたが、それ以外にも組織的な課題にも直面していました。代表が新規機能の提案をしても、デザイナーやエンジニアとコンセンサスが取れず、開発が進まないことも多くなっていました。私も代表の意見を聞こうと言うのですが、その根拠を提示できずペルソナすら答えられなくなっていました。 こうした状況の中では組織としても上手く意思統一が図れず、ミッションを新しく作ってみても社内浸透しない、カスタマーサクセスが営業と顧客との間で板挟みになってしまうなど、さまざまな軋轢が発生していました。 様々なことが起こる中でメンバーにヒアリングを重ねた結果、ミッション・ビジョンの共感だけではアトラクト、エンゲージメントを上げるのは楽ではないということを痛感させられました。エンジニア、デザイナーにとっては作っていて、ユーザーに価値を届けていることに自信を持てるプロダクトが成功することに価値を感じてくれていたことに気づけなかったんですね。

―事業ピボットを決断したのは佐々木さんだったそうですが、どのような経緯があったのでしょうか。

佐々木:上記のような問題を抱えている中で、次第にメンバーも自社プロダクトに自信が持てなくなり、社内の雰囲気は悪化していきました。この現状は、しっかり受け止めなければならない。その上で課題解決のための動きが必要だと考え、私から事業ピボットを提案したのです。

代表の松原に対して、現状のA1Aの課題や将来的なリスクを3ヶ月ほどかけて説明し続けたのですが、彼にしてみれば、右肩上がりに売上がアップし続けているプロダクトをなぜピボットしなければならないのか、なかなか納得できない状況でした。

そこで社内のメンバーに呼びかけ、「会社をどう思っているのか」をポストイットで書き出してもらいました。中にはプロダクトだけではなく、我々経営陣に対する辛辣な意見もありました。この率直なメンバーの声が、ピボットへと踏み切る大きなきっかけになったと思います。

―ピボットにあたり、まずは何から着手しましたか?